教えて考えさせる授業は、思いつきの指導法ではありません。認知負荷理論・行動分析・インストラクショナルデザインなど、それぞれ独立して検証されてきた技術を組み合わせて成り立っています。ここでは、その土台となる11の技術を一覧にしました。この記事は全体の見取り図です。気になる技術があれば、それぞれのリンク先で詳しい解説を読めるようになっています。

前提・なぜこの流れなのか
以下の11項目は、バラバラの技法の寄せ集めではありません。導入から定着、転移までの一連の流れに沿って並べています。最終到達点を見せることから始まり、支援を減らしながら技能を先に定着させ、負荷を削り、型を反復し、失敗を段階として承認しながら自動化へ進み、最後に別の問題へ応用する、という設計になっています。1つの技術だけを取り出して使っても効果はあると思います。この順序と組み合わせで機能する部分があります。どの技術から手をつけるかで迷う場合は、まず自分の授業のどの段階が弱いかを考えるところから始めるとよいでしょう。学級経営側の技術については、別記事で一覧にしています。批判はできても対案がないという指摘に対して、この一覧は実装レベルで応答するものです。

①到達点を、支援付きで先に見せる|先行オーガナイザー
単元の最初に、最終的にたどり着く状態を、教師が支援を添えて先に見せておきます。子どもが自力で発見する前に、目指す姿を先に共有する形です。全体の見取り図を先に持つことで、個々の学習内容が何のためにあるのかを児童が判断しやすくなると考えられます。
詳しくは→最終到達点の見せ方(この一覧の入り口にあたる技術です)
②支援を多→少で漸減させる|スモールステップ
最初は多くの支援を用意し、児童が自力でできる範囲が広がるにつれて、段階的に支援を減らしていきます。支援を最初から最後まで一定にするのではなく、量そのものを設計対象にする考え方です。支援量を計画的に減らすことで、負荷をかけすぎずに自力での遂行範囲を少しずつ広げられると考えられます。
詳しくは→支援を減らしていく順序(多くの技術が土台とする中核的な考え方です)
③技能の習得を先に、理解は後から追いつかせる
技能そのものの習得を先に進め、背景にある理解や理屈づけは後から追いつかせる順序を取ります。理解が先でないと技能が身につかない、という前提そのものを見直す考え方です。手続きを先に自動化しておくことで、理解のために使える認知資源を後の段階でより多く確保できます。
詳しくは→技能先習得の考え方(この一覧の中でも技能習得段階を支える中心的な技術です)
④不要な負荷を削り、本質だけを残す
課題の中から、目的の学習内容と直接関係のない要素を削り、本質的な部分だけを残します。見た目の複雑さを減らすことと、学習内容そのものを易しくすることは別の作業です。不要な情報を削るほど、ワーキングメモリを目的の学習内容に割り当てやすくなります。
詳しくは→負荷を削る設計(支援の漸減と組み合わせて使える技術です)
⑤型を教え、反復し、条件を変えて使わせる|守破離
まず型を教えて反復させ、身についた段階で条件を変えた場面でも使わせます。武道や芸事で使われる守破離という言葉を借りた整理で、実証された発達段階の理論ではありません。習得から応用への移行を段階に分けて設計するための、経験則としての枠組みです。
詳しくは→型の反復部分はこちらの記事で扱っています(④で負荷を削った課題を、繰り返す段階にあたります)。条件を変えて使う段階は別記事でも扱う予定です(※公開予定)

⑥失敗を目標への一段階として承認する|シェイピング
目標に至るまでの過程を細かい段階に分け、一歩進むごとにその到達を認めていきます。最終形にどれだけ近いかではなく、前の状態からどれだけ進んだかを基準にする考え方です。小さな達成を積み重ねる設計は、行動の形成技法として効果が確認されています。
詳しくは→失敗を段階として認める技術として別記事にまとめています(②の支援漸減を、承認の側から支える技術です/※公開予定)。学級全体の場面への応用はこちらの記事で扱っています
⑦正誤の実例を並べて見せる
正しい例と誤った例を並べて見せ、両者を比べさせながら特徴に気づかせます。片方だけでは見えない判断の境界線が、対比によって初めて浮かび上がります。並べて見ることで、正誤を分ける要点に注意が向きやすくなると考えられます。
詳しくは→正誤対比の技術(④で削った本質部分に、注意を集めるための技術です)
⑧選ばせて理由を言わせる|検索練習
選択肢の中から選ばせたうえで、なぜその選択をしたのかを言わせます。理由を記憶から探って言葉にする過程が、検索練習として定着を助けると考えられます。ただし理由は選んだ後の後付けである場合があり、スムーズに出てくるほど浅い処理の兆候だと考えられる点に注意が必要です。
詳しくは→選択と理由づけの技術として別記事にまとめています(⑦の対比を、子ども自身に判断させる段階に進めたものです/※公開予定)
⑨反復による自動化を土台にする
基本的な手続きを繰り返し練習し、意識しなくても遂行できる状態まで自動化します。できるかどうかではなく、意識せずにできるかどうかを目安にする考え方で、正答率が高い段階でも練習をすぐにやめない理由がここにあります。手続きが自動化されるほど、その先の思考に使える認知資源が増えます。
詳しくは→自動化の技術(技能先習得の到達点にあたります)
⑩同じ解法を異なる問題に適用させ、転移を確認する
習得した解法を、見た目の異なる別の問題にも使わせ、応用できているかを確認します。同じ形式の問題を繰り返すだけでは、この確認はできません。意図的に見た目を変えた課題で試すことで、転移が実際に起きているかを確かめられると考えられます。
詳しくは→転移の確認方法として別記事にまとめる予定です(⑨で自動化した手続きが、別の場面でも使えるかを確かめる段階です/※公開予定)
⑪教師の説明そのものを技術として設計する
教師の説明そのものを、思いつきではなく設計対象として組み立てます。この項目だけは特定の段階に属さず、①から⑩までのすべての場面に関わります。説明の構成を意図的に設計することで、どの段階でも伝わりやすさが変わると考えられます。
詳しくは→説明設計の技術(一覧の最後に置いていますが、実際には全項目の土台にあたります)
まとめ
11の技術は、それぞれ単独でも機能しますが、導入から定着、転移までの一連の流れとして組み合わさることで、一つの授業設計になります。教えて考えさせる授業は思いつきの指導法ではなく、ここまで挙げてきた技術の積み重ねの上に成り立っています。今後、条件を変えて使う段階などの技術が公開され次第、この一覧に追加していきます。
証拠水準の内訳
この一覧に含まれる技術の証拠水準は一様ではありません。技能先習得・負荷削減・シェイピング・自動化は、比較的確立した知見にもとづきます。先行オーガナイザー・スモールステップ・正誤対比・転移確認・説明設計は、理論的な裏付けはあるものの、教室での直接検証は限定的です。検索練習(選択と理由づけ)は、記憶研究としては確立していますが、理由が後付けで構成される可能性という留保つきです。型を教えて反復し条件を変えて使わせるという整理は、実証された発達段階理論ではなく、比喩として使っている経験則である点に注意してください。

関連記事一覧
導入〜定着段階
- ①最終到達点の見せ方
- ②支援を減らしていく順序
- ③技能先習得の考え方
- ④負荷を削る設計
- ⑤型の反復(守破離)(条件を変えて使う段階は近日公開予定)
反復〜検証段階
- ⑥失敗を段階として認める技術(近日公開予定)
- ⑦正誤対比の技術
- ⑧選択と理由づけの技術(公開時期確認中)
自動化〜転移段階
- ⑨自動化の技術
- ⑩転移の確認方法(近日公開予定)
全段階を支える土台

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