
前回は、わくわくゲートが
今の「アウトドアトレンド」にこそ合致する装備だった
という話をしました。
しかし、いくら機能が優れていても、
当時の販売現場で最大の壁となった要素があります。
それが――
「見た目」です。
当時、実際に言われていた声
- 「冷蔵庫みたい」
- 「後ろ姿の縦線がどうしても気になる」
- 「左右非対称でバランスが悪い」
多くのユーザーがデザインに難色を示し、
営業マンもその説明・説得に苦労しました。
結果として、
わくわくゲート廃止の最大の理由は
「デザインへの拒否反応」だった
と言われています。
ただし、ここで一つの疑問が浮かびます。
本当に「左右非対称」のデザインは、
自動車において“悪”なのでしょうか?
「左右非対称=ダメ」ではない
日産キューブの成功例

「車は左右対称であるべき」という固定観念がある一方で、
日本の自動車史には
左右非対称で大成功した車が存在します。
それが、
日産・キューブ(2代目・3代目)です。
キューブのリアは、
運転席側から回り込むような
非対称のガラスエリアを持っていました。
しかし、
- 「気持ち悪い」
- 「バランスが悪い」
と言われることはほとんどありませんでした。
むしろ、
- 「個性的」
- 「おしゃれ」
- 「かわいい」
と評価され、大ヒットモデルになります。
なぜキューブは許され、わくわくゲートは拒否されたのか
この差を生んだ決定的な違いは、
「理由の有無」と「見せ方」です。
- キューブの非対称→ ファッションとしての非対称理由を知らなくても、「そういうデザインの雑貨」として成立していた
- わくわくゲートの非対称→ 機能のための非対称ドア構造上、必然的に生まれた線
キューブは「崩し」を美学にしていました。
一方、ステップワゴンはあくまで実用車。
ここに、ホンダが陥った
「デザイン上の迷い」がありました。
「隠そうとした」から、違和感が残った

当時のステップワゴンのリアデザインを
思い出してみてください。
わくわくゲートの縦の切れ目を、
- ナンバープレートのライン
- プレスライン
に合わせて、
なるべく目立たないように処理していませんでしたか?
ホンダの開発陣は、
非対称であることをネガティブな要素と捉え、
一生懸命に隠そうとしました。
しかし――
隠そうとすればするほど、人は違和感に敏感になります。
- 「普通のミニバンに見えるのに、なぜか線が入っている」
- 「左右対称の顔なのに、後ろだけ歪んでいる」
この
「隠しきれない違和感」こそが、
生理的な拒否反応の正体でした。
機能のためのデザインなら、
もっと堂々と主張すべきだったのです。
SUVの世界では、非対称は「勲章」になる

▲SUVの世界を見てほしい。ハシゴやスペアタイヤで左右のバランスはバラバラだ。だが、それを「ダサい」と言う人はいない。そこには「機能」という明確な理由があるからだ。
では、どうすればよかったのか。
そのヒントは、
現在のSUV・クロカン市場にあります。
本格SUVを見てください。
- 背面スペアタイヤ
- 片側だけのリアラダー(はしご)
実は、左右非対称な車は珍しくありません。
それでも、
- 「ダサい」
- 「失敗デザイン」
とは、ほとんど言われません。
むしろ、
- 道具感がある
- ギア(装備)っぽくてかっこいい
- 本物感がある
と、プラス評価されます。
アウトドアや「道具」という文脈では、
左右非対称は欠点ではなく、
「機能の証(あかし)」になるのです。
結論:機能は良かった。文脈設計が弱かった
わくわくゲートの敗因は、
機能そのものではありません。
- 「便利な道具」を作ったのに
- 「普通のミニバン」として売ろうとしたこと
- 機能的な非対称を「デザインノイズ」として隠したこと
この
説明不足と文脈のミスマッチが、
あの強い拒否反応を生んだのです。
もし当時、
「これはただのドアじゃない。
冒険に出るためのギアだ」
と宣言し、
非対称であることを誇るデザインで登場していたら――
評価は、まったく違っていたはずです。
次回予告
【第4弾|再定義編】
左右非対称を“使い分け設計”にすれば、むしろ完成する
では、もし今この非対称を逆に活かすとしたら、
どんな形が最適解になるのでしょうか。
次回は妄想ではなく、
実用に基づいた
「左右非対称の完全活用法」を提案します。
「見た目の癖」を
「機能の役割」に変える、逆転の発想です。


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