食料消費税ゼロで、家計は本当に楽になるのか。数字で検証する

積極財政

「食料品の消費税を下げても、どうせ円安でインフレが進むから意味がない」

減税の話になると、必ずこうした声が出てきます。せっかく税金が軽くなっても、物価が上がってしまえば結局プラマイゼロ。そんなイメージです。

でも、これは本当でしょうか。この記事では、感覚ではなく数字で確かめてみます。結論を先に言うと、減税の効果は円安リスクを大きく上回ります

まず、減税でいくら軽くなるのか

食料品の消費税は今、軽減税率の8%が適用されています。これがゼロになったら、家計の負担はどれだけ減るのか。

一般的な世帯の食料費は、月におよそ7〜8万円です。ここにかかっている8%の税金を計算すると、月に5,600〜6,400円ほど。年間にすると、約7万円の負担軽減になります。

これは「かもしれない」ではありません。減税が実施されれば、確実に軽くなる金額です。

では、円安で家計はどれだけ重くなるのか

一方で、「減税すると円安が進んでインフレになる」という懸念があります。これも数字で見てみましょう。

仮に、円安が10円進んだとします。たとえば1ドル160円から170円へ動くケースです。

日本銀行の研究をもとにした推計では、為替が物価に与える影響(パススルー)はそれほど大きくありません。円が10円動いても、生活実感に近い物価指標への押し上げは限定的です。1世帯の消費支出を月30万円として計算すると、年間の負担増はおよそ2万円にとどまります。

しかも、これは「円安が本当に10円進んだら」という条件つきの話です。為替がどう動くかは、アメリカの金利政策や世界情勢など複数の要因で決まるため、誰にも正確には予測できません。

差し引き、5万円が家計に残る

ここまでの数字を並べてみます。

  • 減税で軽くなる負担:約7万円(確実)
  • 円安10円で重くなる負担:約2万円(不確実)

7万円軽くなって、2万円重くなる。差し引きで、約5万円が家計に残る計算です。

「減税しても意味がない」どころか、家計にはしっかりお金が残ります。しかも、確実に軽くなる7万円に対して、重くなる2万円は起きるかどうかも分からない。天秤のかけ方として、減税のほうが圧倒的に分がいいのです。

その5万円が、経済を動かす

では、家計に残った5万円で、あなたは何をしますか。

欲しかったものを買う。旅行に行く。何か新しい体験にお金を使う。

あなたがそのお金を使えば、それは誰かの売上になります。売上が増えれば、その先の誰かの給料になります。こうして、お金が回りはじめます。

実はこれこそ、私たちが本当に求めていた「良い物価上昇」の姿です。人々がモノを買い、経済が動き、めぐりめぐって給料が上がっていく。需要が増えることで起きるインフレです。

「同じインフレ」でも中身はまるで違う

ここで大事なのは、ひとくちに「物価が上がる」と言っても、中身がまったく違うということです。

今、私たちを苦しめているのは、輸入コストの上昇による物価高です。原油や原材料が値上がりして、企業がやむなく価格に転嫁する。給料は上がらないのに、支払う金額だけが増えていく。これがコストが原因のインフレ、いわゆるコストプッシュインフレです。

一方、減税で家計に余裕が生まれ、人々の消費が増えて起きる物価上昇は、まったく性質が違います。買う量が増えた結果として経済が温まっていく。給料アップにもつながっていく。

物価が上がるから苦しいのではありません。給料が上がらないまま、コストだけが上がるから苦しいのです。

今の日本に必要なのはどちらか

食料消費税の減税は、家計から確実にコストを取り除きます。そこで生まれた余裕が消費に回り、経済を動かしていく。

「減税しても円安で意味がない」という声は、確実な7万円を、不確実な2万円の懸念で打ち消そうとするものです。数字を並べれば、その天秤がどちらに傾くかは明らかです。

物価が上がるにも、種類がある。今の日本に必要なのは、どちらのインフレでしょうか。


※ 食料消費税の減税は、現在議論されている案です。本記事の金額は、世帯の食料費・消費支出の平均値と、為替が物価に与える影響の推計値をもとにした概算です。世帯の支出額によって金額は変わります。数字の精密さよりも、「減税の効果が円安リスクを上回る」という構造に注目してください。

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