探究やPBLがうまくいかない本当の理由
――子どもの力でも、教師の力量でもない
導入|その原因、本当に「人」ですか?
探究学習やPBL(問題解決学習)がうまくいかないとき、
現場ではこんな言葉が聞こえてきます。
- 子どもの力が足りない
- 主体性が育っていない
- 教師の指導力の問題ではないか
ですが、はっきり言います。
この見立てはズレています。
探究が回らない原因は、
能力や意欲ではなく、**授業設計の「順番」**です。
しかもこれは、
努力不足や熱意の問題ではありません。
まじめに、誠実に取り組んでいる人ほどハマりやすい落とし穴です。
探究が崩れる授業で起きている構造



多くの授業で、こんな流れになっていませんか?
- 「考えてみよう」
- 「話し合ってみよう」
- 「自分の意見を出してみよう」
一見すると、理想的です。
しかし、分からない状態のままこれを始めると、必ずこうなります。
- すでに分かっている子だけが動く
- 分からない子は、考える入口に立てない
- 発言者が固定化する
- 授業が「一部の子のもの」になる
結果として、
- 探究が盛り上がらない
- 話し合いが浅くなる
- 教師は手応えを失う
これは探究の失敗ではありません。
準備不足のまま探究を始めた結果です。
認知の反転|悪いのは探究ではない
ここで、前提をひっくり返します。
- 探究学習が悪い → ❌
- 教師の力量が足りない → ❌
- 子どもの主体性が低い → ❌
正確に言うなら、こうです。
考える前の準備が足りていないだけ
「考える」とは、
ゼロから何かを生み出す行為ではありません。
- ある程度分かっている
- 情報が整理されている
- 一人でも処理できる
この状態があって、初めて
思考・対話・探究が動き出すのです。
代替設計|順番を変えるだけでいい
では、どう設計し直せばいいのか。
答えはシンプルです。
先にやるべきこと
- 「一人でも分かる」状態をつくる
- 用語や前提の共有
- 基本構造の理解
- 具体例・型の提示
- 最低限の成功体験
ここで重要なのは、
「完璧に理解させる」ことではありません。
不安なく考え始められるラインまで、全員を引き上げることです。
その後に入れるもの
- 探究
- 話し合い
- 意見交換
- 問題解決
つまり、
安心して考えられる土台 → 探究
内容を減らす必要もありません。
探究を捨てる必要もありません。
順番を変えるだけです。
よくある誤解への答え
ここで、必ず出てくる反論に先回りしておきます。
- 「それって教え込みでは?」
- 「主体性を奪うのでは?」
違います。
先に理解をそろえることは、
主体性を奪うことではありません。
主体性が出る条件を整えることです。
分からないまま放り出される状況で、
主体的に考えられる子は一部だけです。
なぜこの順番が重要なのか
理由は明確です。
- 分からない状態は「思考」ではなく「不安」を生む
- 不安が強い場では、人は動けない
- 理解があると、思考は自然に回り始める
探究は「挑戦」です。
しかし、準備のない挑戦はただの放置になります。
まとめ|問い直したいのはここ
最後に、問いを一つだけ。
あなたの授業、考える前の準備はできていますか?
探究やPBLを成功させる鍵は、
- 新しい手法でも
- 子どもの資質でも
- 教師の根性でもありません
設計の順番です。
この順番を整えるだけで、
授業の景色は確実に変わります。

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