トヨタは、輸出で世界一になった。
Google や Apple は、グローバルだから強い。
──そう思っていないでしょうか。
しかし、これは事実と順番が逆です。
世界を制した企業には、はっきりした「共通点」があります。
それは、まず国内で、圧倒的に売れていたことです。
この記事では、トヨタとアメリカ企業を例に、
「なぜ内需が重要なのか」を、感情論ではなく冷徹な構造で整理します。
トヨタを鍛えたのは「日本市場」だった

まず、歴史を正しく見ましょう。
トヨタが世界一への階段を駆け上がったのは、1970年代から80年代前半です。
この時代、主力車種・カローラの販売の6〜7割は日本国内でした。
つまり、トヨタは最初から
「輸出で勝った会社」ではありません。
- 日本人の給料で買われ
- 日本の狭い道路で使われ
- 世界でも屈指に厳しい、日本の消費者に鍛えられた
その結果として、品質・生産性・技術力が磨かれた。
日本の巨大な需要が、巨大な設備投資と研究開発を支えた。
内需は単なる売上ではなく、**世界に出るための“最強の訓練場”**だったのです。
「内需15%」が示す、日本企業の空洞化
では、今のトヨタはどうでしょうか。
販売台数に占める日本市場の割合は、およそ15%。
この数字を「グローバル戦略の成功」と捉えるのは、あまりに表面的です。
本質は違います。
日本で、十分な商売ができなくなった。
それが、この数字の正体です。
エンジン(内需)が壊れ、
外付けのモーター(海外市場)だけで走っている。
それが、今の日本企業の姿です。
壊れたのは「購買力」だった

なぜ、日本市場はここまで縮んだのか。
理由は明白です。
日本の実質賃金は、30年近く停滞しています。
ここでよくある誤解があります。
「車が高くなったから売れなくなった」という見方です。
違います。
正確には、給料に対して、車が高くなりすぎたのです。
自動ブレーキ、ハイブリッド、衝突安全性能――
技術が進化し、価格が上がるのは世界的に見て自然な流れです。
異常なのは、
その価格上昇を給料がまったく追いかけていない「日本」という国の方です。
これは、企業努力で解決できる「価格」の問題ではありません。
国全体の購買力の問題です。
若者が「選択肢」から外れていく国
さらに深刻なのは、次の世代です。
20代、30代。
非正規雇用の増加と、増え続ける社会保険料。
彼らにとって車は、
「欲しいか、欲しくないか」という嗜好品ではありません。
最初から、選択肢に入らない。
税金、社会保険、教育費、住宅費。
額面の給料から、最初に引かれる固定費が大きすぎる。
消費しないのは、浪費をやめたからではありません。
自由に使えるお金が残らない構造に追い込まれているからです。
節約を呼びかけても、内需は1ミリも回復しません。
アメリカが強い理由は「巨大な内需」にある

ここで、アメリカを見てみましょう。
GAFA(Google、Apple、Amazon、Meta)がなぜ強いのか。
理由はシンプルです。
巨大な内需が、安全装置として機能している。
ITも、広告も、医療も、
まず国内で爆発的に売れる。
だから、巨額の利益が出る。
その利益があるから、
失敗できる。
次の技術に投資できる。
アメリカの医師やエンジニアが高所得なのも、能力差ではありません。
国内市場が、その価値にお金を出せる構造になっているからです。
企業は日本を「捨てた」のではない
よく、「企業は日本を捨てた」と言われます。
しかし、これも順番が逆です。
日本市場が、企業を支えきれなくなった。
売上が立たない場所に、投資は集まりません。
企業が海外に向かうのは、愛国心の問題ではなく、
生き残るための経済的必然です。
内需が細るということは、
新しい挑戦を支える土台が消える、ということでもあります。
結論:内需を壊した国に、世界一は生まれない
トヨタも、アメリカの巨大企業も。
例外なく、まず内需で育ちました。
内需があるから、安定する。
安定するから、失敗できる。
失敗できるから、技術革新が生まれる。
内需を壊し、
国民の購買力を削り続けた国に、
世界一の企業は二度と生まれません。
これは思想や感情の話ではありません。
歴史が証明し、構造が導き出す結論です。
私たちは、この「土台の崩壊」に、
どう向き合うべきなのでしょうか。

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